153 ご購入頂いたFurchの出荷前セットアップ

2003年にフォルヒギターの輸入販売をはじめて以来、例外なくすべての個体を私たちがセットアップをおこなって送り出してきました。全品検品・全品調整をここまで徹底しているギターブランドは他に例がないだろうと自負しております。

私たちが出荷前のセットアップに徹底してこだわる理由は、欧米基準の製品クオリティを日本基準にまで高めるためです。日本人が備えている高い感受性や指先の鋭いセンサーは、他に類を見ないものだと考えています。

お客様がギターを手に取って頂いた瞬間に感じられる馴染みの良さが、弾きやすさや素直な出音へとつながるものと信じています。

今回は、お客様からご注文頂いたギターを出荷前にセットアップする様子をご覧頂きながら、日本に届いた新品のギターをどのように調整して出荷しているのか、その基本ルーティンをご紹介いたします。

ギターが入った沢山の箱をひとつひとつ開封して作業をはじめます。

使用する道具は多くありません。

あらかじめ弦をチューニングしておき、ネックの反り具合を確認することからはじめます。

ネックは基本的にストレートになるようにトラスロッドを調整します。

最新のフォルヒにはCNR System Activeというネック角度の調整機構が備わっています。

これを調整することで、最適なネックとボディの角度と弦高を得ることができます。

トラスロッド調整の後に、専用の治具でネック角度を調整していきます。

ネックの反りと角度の調整が決まったら弦を緩めます。

必要に応じてサドルの高さを微調整します。

ブリッジピンの先端を斜めに削ることで、弦交換時のボールエンドの引っ掛かりを予防し、正しく弦を張れるようにします。左が作業後のブリッジピンです。

サドルとブリッジピンを元に戻します。

ナットは接着されておらず、横にズレたり脱落することがあるので、点付けで接着しています。

ナットの高さも弾き心地を左右する重要なポイントですので、軽い力で均一な押さえ心地になるように整えています。

木材や塗料がわずかに縮むことで、新品であってもペグの締め付けが緩んでいる場合があります。緩んでいるとビビリ音の原因になるため、確認と増し締めをします。

丁寧に拭き上げるのと同時に、外装に問題がないかを確認します。

日本国内用の保証書などと共にギターをケースに収めます。

しっかりと養生をして梱包したら準備は完了です。


新品のギターのセットアップに必要な作業はある程度決まっているので、ルーティン化することができます。


これに加えて、ご注文時にお客様のプレイスタイル「使用する弦のゲージ」「メインでプレイされるチューニング」「ピッキング」などをお伺いすることで、セットアップを最適化してご用意させて頂くことも可能です。


最後に、このように均一なコンディションに整えてお届けしたギターであっても、お客様の元で弾き込まれることで様々なキャラクターへと成長していきます。たとえ同じモデルであっても、ひとつとして同じものはありません。


そのような経年変化についても熟知しておりますので、ご愛用のフォルヒのコンディショニングの必要を感じられましたら、いつでもお気軽にご相談ください。新品で送り出したギターの成長した姿と再会できるのも、この仕事の楽しみのひとつです。

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152 元起きしたネックの指板を削って改善する(Martin / D-28)